半年くらい前から、左胸にシコリのようなものがあるようなないような気がしていた。
ものぐさ太郎な私はそのまま放っておいたが最近になってもやっぱり左胸にある。
友達に話したら
「ちょっとー、乳がんだったらどうすんのよ!体に転移してたら死ぬかもしれないんだよ!早く病院に行きなよ!」
と脅迫されて(いや、心配してくれて 笑)病院に行くことにした。
病院に行く前の日から私の脳は、これから起ころうとするショックから回避するための準備体制に入っていた。
「昨年、女性疾病に対応している医療保険に入っておいてよかった。」
「そうだ。本当に乳がんだったらブログになんて書こう。」
「えーっと、タイトルは『私の小さな胸の中の小さなシコリ』・・いや『私の小さな胸の中の小さな乳がん』の方がいいかな。」
「もし手術することになったら、ついでに両胸もあわせて豊胸手術とかやってくれないだろうか。」
「入院するなら諏訪湖の一望できるあの病院がいいな。あ、でも花火大会の時だと最高なんだけどな。」
「やっぱり病院で宣告を受ける時はビッグフレームのサングラスがいいかな。じゃあ黒いファーのコートを着て・・」
こうなるともう楽しんでいるとしか思えない。
私は困難やトラブルに直面すると一気に妄想が膨らみ、どうも結局ワクワクして楽しんでしまう良いんだか悪いんだかわからない癖がある。
それはたぶんエベレストを前にしたアルピニストと同じような高揚なのだ(違うって)
すでに私の脳には病院の先生から宣告を受けるビデオが流れている。
それはもうほぼ現実であるかのように吸収しはじめた。
「町医者に行ってから紹介状をもらって大きな病院にいくなんて二度手間だ。
だったら最初から入院したい病院へ行こう。」
そう決めて最初から諏訪湖が一望できる病院へ向かった。
もちろん私の出で立ちはビッグフレームのサングラスに黒いファーのコートだった。
病院に着くと受付で「紹介状がないと二千円くらい初診料がかかりますけどよろしいでしょうか。」と言われたので
どうせ町医者で診てもらってから来ても紹介状料だってかかって同じことなのだからもちろん了承した。
この病院はまだとても新しくて、諏訪湖の目の前に建っている。
待ち時間をつぶすために小さな図書館もあった。
私は女性作家のおもしろそうな本を一冊借り、外科のフロアの椅子に腰をかけて読みながら待つことにした。
その本が思いのほかおもしろくて、ひとりで読んでいたら大声で笑い転げているところだったがここは病院。
みんな静かに順番を待っている。
口がゆるむ。やばい笑いそうだ。なにげに手で口を押さえながら小分けにして吹き出そう。だめだ。そんなこと考えてるとよけいおかしい。こんな時みんなどうしているのか。こういうところで本を読んで吹き出しそうになる衝動と必死に戦ったりするのは私だけなのだろうか。
などと頭をめぐらせているうちに長い待ち時間は終わりを告げた。
私の名前が呼ばれて、女性の看護士さんが「最初にマンモグラフィー検査をしますのであちらの検査室の前でお待ちください。」と言うので「まんもぐらふぃーって何ですか。」と聞くと「えーっと、胸を板で縦と横からはさんで検査するものです。」と教えてくれた。
あー聞いたことがある。
私のこの小さな胸がはさまるんだろうか。
ちょっと心配になった。
検査室に入ると、検査技師の若い男性がひとりいた。
私は乳がんの検査って、てっきり女性がやってくれるものだと思い込んでいたので急に恥ずかしくなった。
検査服に着替えて検査が始まった。
胸が透明な板の間にはさまってせんべいのようだ。
だんだんネジをしめていって最後はちょっと痛い。
私の小さな胸でもちゃんとはさんでくれた検査技師は職人だなと感心。
マンモグラフィー検査が終わると、先生の診断だった。
検査で撮った写真を見ながら先生が
「いつごろからシコリに気が付きましたか?」
と聞いてきた。
"気が付きましたか"ってことはやっぱり何かあるってことですか!?
と楽しかった妄想が現実になってちょっと血の気が引いた。
でも先生は
「うーん。マンモグラフィー検査でほぼわかるのですが大丈夫そうなんですよね。でも念のため超音波検査もしてみましょう。」
と言った。
どうやら乳がんではないらしい。
私の妄想は風に吹き飛ばされた砂のようにサラサラと遠くへ飛んでいった。
そうなったらもう"念のため"の超音波検査が急にどうでもよくなって帰りたくなった。
でもそうもいかないので超音波検査室へ行くと
今度は男性2人の検査技師が待っていた。
2人がかりで私の胸にジェルを塗り、検査装置(ローラーみたいな感じのもの)を私の胸に押し付けてコロコロしている。
そんな状況の中でやたらと真剣な顔で検査しているものだからまた吹き出しそうになった。(だからといって2人がヘラヘラ笑ってたらそりゃ嫌だけど。)
時々乳首に当たったりするけど私がアンッとか声を出したら驚くだろうなとか考えているとまたおかしくなった(もう変態)
検査も無事に終わり、また先生の診断になった。
「やっぱり何もありませんね。大丈夫です。」
「シコリに感じたのは、恐らく乳腺が厚い部分だと思いますね。」
「○○さんは胸の脂肪が少ないので、触った時に乳腺が当たるのだと思います。」
終わった。
なんだろうこの胸に風が吹いている感じ。
結局私は、
初診料と診察料と検査料合わせて6,000円払って
大病院の先生に胸が小さいことを指摘され
先生の触診も含めて4人の男性に小さな胸を披露して帰ってきたのでした。
Comments
路地裏の少年
なんとかと天才は紙一重と言いますが、pasさんにはそのことを改めて思い知らされますね(笑)
pasさんには文才とそれ以上の自身の魅力があります。
だからここに来たくなる。
Holy
オモシロイ!
めちゃめちゃウケました。
pas
>少年
ありがとう♪
私にはたぶん文才はないと思いますが、きっと人より自分の妄想に素直に従って生きていて、それを恥ずかしげもなく赤裸々に書いているだけですよ。笑
>Holyさん
ウケてくれてありがとう!
笑ってもらえなければ、あの日の私がうかばれません。
うづまきなると
pasちゃんには私のこの大きな笑い声が聞こえてるろうか?(≧∀≦*)
ごめん、ごめん、笑ったりして
pasちゃんってやっぱ凄い才女だわ
ドッキドキした緊迫感がリアルに伝わるし、そんな中でも不思議にクスッとくるし
んもう~、最高だァヽ(゚∀゚ )ノ
なんでもなくて良かったね。
お疲れさまでした(^ー^)ノ
pas
聞こえましたよ!
うづさんのあの笑い声♪
どうもありがとう!!
最近会社から帰ってくるのが午前2時や3時でなかなか書けずにすんまそん!
毎日ブログ書けてた数年前(あの頃はブログなんて言葉はなかったけど)が懐かしいわ。。
うづさんは相変わらずマメで尊敬!